アイの日記 〜宇宙とつながる脳性麻痺のおばあちゃん〜

宇宙とつながるスピリチュアルなアイちゃんの日記です

石崎アイ 〜 生い立ち 15 〜

冬の後には必ず春が来ることを信じて

 

アイは家がまずしかったので、厳しい生活で、父親は短期でつらいことばかりでした。そんなとき、母親はいつも信じる言葉、冬の今年冬は必ず春となると言って口ずさみながら自分自身を励まし、アイをも励ましていたのです。そしてアイは自分の夢と希望を言葉に表すと大人って勝手なもので、今度は母親から「槌より柄の太いことばかり言うな!」と怒鳴られ、体が効かないくせに大きいことを言うなということでした。人間は幸せで楽しいことばかりではない。

つらく悲しいことばかりでもない。自然も人間も生かされている限り、苦楽が備わっているから、考え方の相違ですごい人生を築けるかもしれない、アイはいつも何か変化のある日々を作り出す面白い性格でした。そして楽しく考えて良いことをたくさん数えながら自信を持って積極的に行動していたためか、夢を描いて不思議と希望通りに実現していることで、アイは今が初春だと思っていました。さて、療育園にすっかり慣れてみんなに好かれて楽しく助け合っていたのです。そしてお手伝いが好きなアイは、ちょっとしたことでも積極的に進んでやっていたため、職員たちからも頼りにされて、特に御洗濯場のおばさんたちにかわいがってもらいました。

養護学校の桜井先生はそんなアイの姿を見ていて声をかけてくれたのです。桜井先生は中年女性で見かけは少し怖そうでしたが、とても素晴らしい先生でした。アイが社会復帰を目指していることを聞いて特別に勉強を教えてくれることになったのです。国語算数ローマ字の他に家庭科からミシンの使い方まで教えてくれたのです。

桜井先生は、アイちゃんというかわいい娘さんがいて、いつも娘さんの話をしながらアイと同じ名前だと言っていろいろな面から真剣に教えてくださいました。

そしてみんな反抗期の年頃になっていたためか、男子は異常に威張り、女子を馬鹿にしていじめるようになったのです。女子はなっかよくまとまっていて、男子の妬みからなのかわからないけれど喧嘩を仕掛けてきたのです。
「おめえたちはな、カエルみたいにきゃきゃきゃきゃとうるせえな!カエルはカエルでもな、小便カエルか、くそカエルじゃねえか!そうだそうだ!小便ガエル、糞ガエルだあい!」日頃男子に馬鹿にされて泣いている女の子たちはこのときとばかりに怒り出しました。
そして、アイの周りに集まってきて助けを求めようとしたのです。
「何をあんたたちこそうるさいんだよ私達を見れば下にしてるんじゃないよ。」「アイ聞いてよ、いつも嫌なことを言って馬鹿にするんだよ、」「ひどいじゃない!よし、女の子をいじめるなんて最低の馬鹿野郎だ」
いい加減にしなさい。正義感の強いアイは1人で男の子に歯向かっていたけれど、男子5人に押しかかってこられ、男子の方が強くてアイはひとたまりもなく負けてしまいました。「糞面白くない、絶対に許さねからな、覚えてるよ」
アイは苦し紛れについ乱暴な言葉を吐いてしまい、その夜、点呼が終わった後寝たけれど、いまいましい気持ちが先に立ってどうしても眠れませんでした。そこでこっそり抜け出して、外で頭を冷やしていると看護師さんと宿直の先生が
懐中電灯を照らしながらアイを探しに出てきたのです。宿直はいつも男の先生で養護学校の萩原先生だったのです。萩原先生はアイを見ると、いきなり怒りました。「アイ!お前何やってんだ、駄目じゃないか馬鹿者。早く部屋に入って寝ろ!人に心配させたり迷惑かけるなんていけないぞ。お前たちは本園から来たみんなの先輩じゃないか、しっかりしろよ、先輩から規則を守れないでどうするんだ、お前がそんなことじゃ困るか!」アイは下を向きながら悪いと思ったけれど、男子が異常な威張り方で面白がって女子をいじめていることが許せないので、どうしても萩原先生に話してわかってもらいたかったのです。
萩原先生はわかってくれたように深くうなずいてアイを頭をなでながら慰めて部屋まで連れて行ってくれたのです。アイは自分の気持ちをわかってもらえたことと萩原先生の温かい眼差しで怒られたことで胸がいっぱいになり泣き出したのです。そして女の子たちも萩原先生の心根がわかって、アイと一緒に泣いてしまいました。アイは怒られたけれど、萩原先生の優しさを感じて張り詰めていたものが一気に崩れ、
涙が止まらなくなり萩原先生の胸の中で思いっきり泣いてしまいました。
「人を馬鹿にするなんて最低の人間がすることだな。よしよしわかった明日な。野郎どもによく事情を聞いて、今後やらないように注意しておくからな、今夜はいいから寝ろいいなわかったらよしよしも泣かなくていい」
今まで両親から怒られて一度も優しい言葉をかけられたことがなかったので萩原先生の愛情のある言葉がどれほどアイの心に響いたことかしれませんでした。しおれかけていた雑草が夕立の雨に打たれて一挙に青々と茂ったようにぐんぐんしたアイの気持ちはまた元通りに元気な姿に戻ったのです。
そして萩原先生の説得が効いたのかその後、男子の態度は打って変わったようにおとなしくなり、気持ちが悪いほど優しくなって、みんな仲良くまとまっていったのです。夏休みに入り、整肢療護園から移されてきた数名のメンバーが、今年はお盆に家に帰れると喜んで日にちを数えて楽しみにしていたのです。
そんなとき、アイに悲しい知らせが入りす長年に渡ってかわいがってくれた祖母ミツの容態が悪くなった。ということでした。母まつ江からの連絡で、父親が迎えに出たから家に帰る支度をしてもらっているようにとのことで、アイは祖母が心配でどうしたら良いのか自分でもわからない状態でした。
「先生ばあちゃん大丈夫だよね。死なないよね。」指導主任の松川先生は心配して家に帰る準備を手伝いながら励ましてくれたのです。「あなたはおばあちゃんにかわいがってもらったので、きっとおばあちゃん待ってらっしゃるわよ、よくお話してらっしゃいね」そして父親が迎えに来てくれて、職員たちに挨拶をしながら、
いろいろと詳しい話をした後、1週間ほど外泊許可をもらってアイは父省吾に手を引かれてバスで家に帰ったのです。家に着くと母まつ江が迎えに出てくれて、1年半ぶりに帰ったアイに祖母のと、今までのことを涙ながらにしみじみと話して聞かせました。
「アイ!久しぶりだに、元気でいたかい?おめえを心配してなばあちゃんが待ってるだよ」「はやくそば行ってやりなぁ!」「ばあやんは歳でな、91歳だからお医者さんに診てもらったらな、老衰になっているだと!」
 
まつ江はそう言って祖母ミツが寝ている部屋へアイを連れて行き、静かに声をかけました。「バーやんアイが帰ってきた。わかるかい場合やアイが来ただよ」祖母は床につく伏せたまま目を開けてやつれた手をそっと出し、アイの手を取って懐かしむように迎えてくれたのです。
「おうおう アイか!よく来たな大きくなったなバアヤンはアイのことが心配でなあ!元気だったか!そうか良かった良かった!ばあやんはもう駄目だわや。」
祖母は静かに笑いながら大きくため息をついて自分の寿命を悟ったようでした。両親から祖母の命は長くはないと聞いて覚悟はできていたつもりでも、やっぱり元気な頃の祖母の姿を思い出し、アイは悲しみの涙をポロポロと出して泣きました。
「ばあちゃん元気になって、アイが帰ってきたからね、元気になってよ!ばあちゃんの昔話が聞きたいの!ばあちゃん死なないで!」
しかし、アイの願いもむなしく祖母ミツの言葉はもう聞けなくなっていて、アイに水を飲ませてもらうと安心したのでしょう。それから、行く日も眠り続けていたのです。アイは1週間の外泊だったので、祖母が心配で心残りで療育園に帰りました。
 
そして1ヶ月後祖母ミツはアイを心配しながら91歳の生涯を遂げたのでした。祖母が亡くなったという知らせを受けたとき、アイは風邪を引いて40度の高熱を出して寝ていたのです。父が迎えに来ていたけれど、熱があるため、注射を1時間おきに5本打っても下がる気配がなく、医者と看護婦は思案の末、かわいそうだけれど仕方なく今度はアイのお尻に注射を30分おきに4本打ったのです。ようやく36度前後に下がって父翔吾もにおぶさりバスに3回も乗り換えて、家に着いたのは夜の8時過ぎでした。自分がしっかりしなければという気持ちと、なぜか祖母が見守ってくれているような元気な姿だったので、アイの元気な姿を見て、家族も周りも驚くほどでした。
そして翌日祖母の葬式が行われ、当時の田舎はまだ土葬でしたので、祖母の柩を見送りアイはお墓まで行かなけれ行かれないので、家の庭から「野辺送り」をはるか遠くに見えなくなるまで見送りながら祖母から学んだ様々なこと、悲しい涙で思い出して泣いていました。
 
「アイはばあちゃんのおかげで大きくしてもらえたの!ばあちゃん長い間ありがとうおばあちゃん、いくら叫んでもばあちゃんはもういないんだよね!」
 
祖母は亡くなったけれど、アイの心にたくさんの言葉や考えを残してくれたのです。アイの将来のために人生の道しるべになるようなものとして様々なことを教わっていました。浅間山が北に見えて、南に蓼科山が見える場所で、祖母は延々と眠り続けることになりました。