アイの日記 〜宇宙とつながる脳性麻痺のおばあちゃん〜

宇宙とつながるスピリチュアルなアイちゃんの日記です

石崎アイ 〜 生い立ち 2 〜

「自然のいじわる」

まつ江は、三人姉妹の末っ子で、長女次女の姉達が家を出てしまったので老夫婦善次郎とミツは、まつ江に家を継がせたいと決めていたのです。まつ江の言い分も聞かず、老夫婦は自分達で一方的に縁談を決めてしまったのです。気に入らない相手だろうが、悪い夢を見たと思って結婚をして家を継いでくれと両親から頭を下けられてしまったら従うしかなかったのです。そしてまつ江の心には何時も「自分は、親のために犠牲になった」という想いがあって、心はいつも暗く気持ちが優れない日々だったのです。夫は自分の可愛い子供なのに、アイが生まれたから一度も抱いてくれようとはしない、父親としての役目を果たしてくれなかったのです。そしてまつ江は、よくよく愛想を尽かし我慢のすえ、離婚に踏み切ったのです。お互いの意識や考え方が全く違うこと。価値観が違うことが大きな原因でした。まつ江はしばらくの間周りの人たちから再考もすすめられたけれど、アイのことを考えるとなかなか再婚をする決心はできませんでした。しかし農家をやっていくには、いろいろな面で牛や馬を扱って、「田うち」をやることは、女では到底無理なことで、どうしても男手が必要となっていました。アイもだんだん大きくなり、まつ江は自分の身の振り方を考えたのです。そして、「やむを得ず」みんなの意見に従って再婚をすることにしました。今度はまつ江のいとこにあたる省吾が婿養子に入ってくれたのです。まつ江は省吾と結婚して、アイにまた2度目の新しい父親ができたのです。アイの幸せがあると良いのですが、月日が経って、アイも3歳になろうとしていました。アイは自然から生きる使命を与えられて、目立つ身体まで与えてくれたのです。

「おおいアイ、ちょっとおかしいじゃねか!」「おかしいって?」

家族が抱き上げたとき、3歳になったアイの身体は、赤ん坊のように、クニャクニャでした。自分で動かそうとしないし、言葉も喋らないし、家族も周りも慌てだしました。家族はアイの命が助かったことで、体の変化に誰も気がつきませんでした。

みんながアイの体に気がついたのが遅かったのかもしれません。自然からたくましい生命と清らかな心を約束されて生まれたのかも知れませんでした。しかし、アイはお水を飲みたいときも「ブー」、おしっこしたいときも「ブーブー」としか言えなかったのです。幸い、アイは知能は遅れていないので、周りの人の言葉がよくわかって聞き入れていたため、家族が世話をするにはとても楽でした。周りの人たちが心配してかわいい愛のために一度病院へ連れて行って医者を見てもらったらどうかと常々言われていました。けれどそう言ってる間にアイに弟ができたのです。

昭和26年、3月に男の子が生まれたことで、家族みんな大喜びです。アイは急に母親から離されて、あまりの寂しさで泣くばかり。熱を出して泣き、鼻血を出しては泣き、とにかく泣くことしかできませんでした。アイは気持ちが優れなくて、祖母の背中で泣いていると、父省吾が寄ってきて、うるさがって怒ったり、アイを叩くのです。「うるせえな、なぜ泣くだだあ」「シャラうるせえ」そんな光景を黙って見ていられない祖父善治郎は、アイがかわいそうで胸の詰まる思いだったので、省吾を怒りました。そんなちいせえ者を殴ってどうするだ。殴りたきゃ俺を殴れ。アイは夫婦げんかを見せられることが怖くて、なにぃ!とにらまれる父親が怖くて、「ばあちゃん怖いーー」とブルブル震えながら祖母にしがみついていました。とにかく家族はそれぞれに個性が強く、何事も石橋叩いても十分渡れない人たちでした。祖父善治郎は大酒飲みで田畑を売ってまで酒を飲まずにはいられなかったのです。2度目、婿養子に入った省吾も、これまた短気で一徹の性格だったので、物事が曲がったことの大嫌いな気性でした。まつ江は気が強く勝ち気の性格で、いつも「自分は犠牲になった」という思いが、常に心の中にあって、省吾と口喧嘩の絶え間がなかったのです。省吾は自分の思いやりが勝ち気のまつ江に受け止められず、気持ちがだんだん怒りになって暴力や乱暴的な言葉になってしまったのです。

「こんちくしょうめー、てめえみてえなものの叩き殺してやるぞ!」

松江も黙っていれば良いものを、つい口をきいて口を聞くたびに、夫婦げんかになって喧嘩の絶え間がなかったのです。省吾に口をきいて夫婦げんかが始まり、省吾がカマを投げつけたり、斧を振り上げそれは凄まじいもので、村中の名物夫婦になっていました。アイは、心の奥に父親の存在が恐ろしいとしか残されていませんでした。とにかく家族の心は、いつも線香花火のように火花を散らしているようでした。